食品大手、代替肉(植物由来のお肉)事業を強化 海外にも展開、政府後押し

フィリピンの食品大手が、植物などを由来とする「代替肉」の事業を強化。健康志向による世界的な需要の高まりを背景に、国内だけでなく、欧米やアジアでの事業展開に乗り出す企業も相次いでいます。代替食品市場の拡大は続くとみられており、フィリピン政府は国内企業を支援していく方針を打ち出しました。
動物の肉の食感や味わいに近い代替肉はフィリピンで認知され始め、。菜食主義者(ベジタリアン)だけでなく、畜産業が環境に与える影響の軽減などを理由に注目が集まりました。複数のファストフードチェーンも代替肉を採用したハンバーガーを投入しています。
財閥サンミゲル・コーポレーション(SMC)の食品・飲料子会社は、植物由来の肉を使った調理済み商品のブランド「ビーガ」を昨年売り出しました。現在、国内のスーパーマーケットで販売を拡大しています。
フィリピン市場を狙って、業界大手の米ビヨンド・ミートなど海外の代替食品メーカーも商品を販売している。これに対し、フィリピンの食品大手は国内向けのみならず、急成長する世界市場の需要を先駆けて獲得しようと動き出しました。
日本貿易振興機構(ジェトロ)マニラ事務所の担当者は、アフリカ豚熱(ASF)で豚肉の供給が不安定化したことなどが、フィリピンをはじめ東南アジアで消費者の意識変化を後押ししていると説明。「世界的に市場が拡大する中で、早期に需要を取り込みたいというフィリピン企業の思惑もあるのではないか」と指摘されています。
海外市場に打って出る企業もある。食品製造大手で代替肉ブランド「アンミート」を展開するセンチュリー・パシフィック・フード(CNPF)は今年6月、初の海外展開としてアラブ首長国連邦(UAE)に進出。価格を他社と比べて約30%低く設定し、わずか2カ月で取扱店は200店に広がった。グレゴリー・バンゾン上級副社長は「競争の舞台は世界にある」と話しています。
モンデ・ニッシンは、2015年に菌類由来の肉を手掛ける英国発祥の大手クォーンを買収し、米国やシンガポールなど15カ国に商品を輸出しています。今年6月にはフィリピン証券取引所(PSE)に上場。地元紙によると、調達した資金を使って生産能力を増強し、米国や欧州での事業拡大を目指しています。
調査会社ミンテルによると、代替食品市場は27年までに世界全体で742億米ドル(約8兆1,400億円)規模に成長すると見込まれ、アジア太平洋地域がこのうち約300億米ドルを占めています。
フィリピン政府も代替肉を後押しています。貿易産業省のマカトマン次官は「フィリピン産の宣伝には、政府によるアプローチが必要だ」との見解を示す。国内に代替肉の原料となる農産物が多いことを踏まえ、「農業省と適切な供給を維持するとともに、購入先の確保に向けて海外貿易部門とも協力していく」と強調しました。

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この記事の監修

家村均
家村均

一般社団法人 フィリピン・アセットコンサルティング
エグゼクティブ・ディレクター
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慶応義塾大学経済学部卒業後、東急に入社し、海外事業部にて、米国・豪州・ニュージーランド・東南アジアなどで不動産開発や事業再構築業務に従事。
また、経営企画部門にて東急グループの流通・メデイア部門の子会社・関連会社の経営・財務管理を実施した。(約15年)
その後は、コンサルティングファーム(アクセンチュア)や投資ファンド(三菱UFJキャピタル)などで、企業や自治体の事業再構築、事業民営化等の支援や国内外のM&A案件のアドバイザリーを実施し、2018年10月より、GSRにて、日本他の投資家および企業、ファンドなどに対してフィリピン不動産への投資や事業進出のアドバイザリーを行っている。

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